クロマチックハーモニカのバルブのお話
よく、生徒さんや愛好家の方からバルブやバルブ交換に関するご質問をいただくことがあるので、とりあえず知っていることを記してみました。
(画像の上側はHOHNER、下側はスズキのシリウス等用のバルブセットです。)
〜この記事は、初心者の方にも参考していただくことができると思いますが、楽器の内部構造等をある程度知っていないと理解しにくい箇所も一部あります。予めご了承ください。〜
音が全く出ない場合、バルブを交換しても意味のないことが多い
稀に例外もありますが、音が全く出ない場合はリードに異物が詰まっているなど、リード自体が原因のことが多いです。
但し、タングブロック奏法の方など唾液が極端にたくさん出る場合などで、バルブが完全にリードプレートにぺったりくっついてしまっている場合は、バルブをそっとリードプレートから離すことで改善します(でも、ついでに交換しておいてもよいかも・・・)。
なお、一般的にバルブの交換が必要な現象は、所謂「う〜ん、ぷ現象」と呼ばれている、詰まったような感覚で鳴りにくくなる状態です。吹きの場合、小さな音では鳴らなくなり、強く吹くと突然大きな音で鳴るのが特徴です。
パッカー奏法の場合、吸いで起こることはごく稀です。
バルブの劣化でピッチが狂うことがある
頻度としては稀かと思うのですが、バルブを交換することでピッチの不具合が直ることがあるようです。当教室でも今まで数例ありました。
リード交換の前に、バルブを剥がした状態でピッチを再度測定してみるとよいかもしれません。
6番を鳴らすと異音がする場合がある
主にHOHNERの機種だと思いますが、6番穴を鳴らすと(主に吸い)バリバリと異音がするものがあるようです。
何故6番に頻出するのかわからないのですが、鳴らしたときにしっかり閉じているはずのバルブ(実際鳴っているリードの隣に貼っているバルブ)から空気が漏れてバルブが揺れる?!ことで異音がするようです。
その場合、超低音用のバルブ(HOHNERのバルブセットの場合、21、22あたりの素材違いもの)を6番に貼っていたバルブと同じ長さに切って貼ります。このとき、バルブの2枚重ねになっている素材違いのものは同じ長さにしておきます。
(要は、重たいバルブにして息漏れを防ぐことで異音を解消させる)
稀に、2番など別の穴番号でも起こることがあるようです(一度だけ経験あり)。
なお、すでにこの対応がなされた状態で販売されていることもあるので、自分でバルブ交換する場合は、基本的にはもともと貼ってあったバルブと同じものを貼っておくと安心です。
製造時期によってバルブの色や素材が違うことがある(HOHNER)
HOHNERのバルブセットは製造時期によって色や素材が違います。
高音用(08あたり)を除けばほとんどが2枚重ねになっていますが、下の長い方は昔はメッシュ素材ではなく白い色だったと思います(メッシュは透明)。
そして、上の短い方の色も、時期によって白色のものと茶色のものがあったように思います。
なお、超低音用は、高音用を除いた別のものと少し素材が違うようで、色も違う場合があると思います。
また、かなり昔(私がクロマチックハーモニカをはじめた18年くらい前の頃)は、超低音用のバルブは立体型でした。
これを、スズキのバスクロマチックハーモニカの1〜3(4?!)あたりに貼ると吹き吸いしたときの異音が解消するという噂もあるようですが、私自身は試していないので真偽の程は不明です(試される方は自己責任でお願いします)。
HOHNERとスズキ、バルブのコスパはどちらが良いか?
難しい問いです(自分で書いておきながら・・・)。
まず、HOHNERのバルブセットの方が単価は安いです。価格は上ですが量がとても多いことと、超低音、高音用以外のものは、交換したい長さのバルブがなくなった場合、それより長いものを短くカットして利用できますが、スズキの場合はもともと入っている量も少ない上に、形状上別の穴番号用のものの利用は難しいのではないかと思います。
ただ、私の経験上ですが、スズキの機種に変えてからバルブ交換の頻度はかなり減りました。同様の事をおっしゃっているベテラン愛好家さんもいらっしゃったので、おそらく私だけではないのでは?!と思っています。
でも、スズキのバルブセットは単価的にはかなり割高です。なので、この問いの答えは難しいのです、、。
初心者さんの方がバルブ交換の頻度が高い
私の経験上ですが、どうも初心者の方や低音、高音が鳴りにくい、音が硬いなど音の悩みを抱えておられる方に、バルブ交換の頻度が高い場合が多いです。
口先で吹き吸いすると、楽器の中に湿気がこもりやすいのでしょうか?!
初心者の方は、特に練習前の楽器の温めを念入りに(と言っても熱風などは×)していただければと思います。
7番以降のバルブは、幅を少し狭くすると交換頻度が減るらしい(HOHNER)
お手持ちの機種にもよるかもしれないのですが、高音域(おそらく7番あたりから)のリードの幅が他より少し狭くなっている場合、それに合わせてバルブの幅も少し狭めるとリードプレートとバルブの接地面積が減り、その分バルブの結露が起こりにくくなるようです。
但し、やり過ぎて隙間ができると異音の原因になりますのでご注意ください。
なお、スズキのシリウス等用のバルブは先細になっていて、バルブの張り付きを防ぐ形になっていると思われます(あくまで私の推測)。
機種によって、同じ穴番号でも交換するバルブの位置が違う場合がある
これは、すでにご存知の方も多いかと思いますが、ストレート配列(ショートストローク)とクロス配列(ロングストローク)の違いです。
ストレート配列はスライドレバーを離した状態では上側のリードプレート(カバーに穴番号の刻印がある方)に付いているリードが鳴り、レバーを押す(シャープする)と下側のリードが鳴ります。なので、バルブ交換時は、レバーを離した状態で不具合が出ている場合は上側、押した状態での不具合なら下側の該当穴番号のバルブを交換します。
一方、クロス配列は穴番号によって変わってきます。奇数穴番号(1・3・5・・・)はレバーを離した状態で上側、押した状態では下側のリードが鳴る仕組みです。偶数穴番号(2・4・6・・・)では逆転し、レバーを離した状態では下側、押した状態では上側のリードが鳴ります。
なので、バルブ交換時は、穴番号が奇数か偶数かを把握して交換することが必要です。
動画でも解説していますので、よろしければ参考になさってください。
以上、バルブについて思い浮かんだことを記してみました。
少しでも参考にしていただけましたら幸いです。
また、お気づきの点や最新情報など、記されていない情報をお持ちでしたら、お知らせいただきましたら幸いです。
最後にバルブ交換の動画を載せておきますので、これからチャレンジされる方はよろしければご視聴ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。